君を選ばないなんてもったいない

「今日はデートって言ってなかったか」 僕と肩を並べて歩いている親友に、何気ない風を装って声を掛ける。華の金曜日だ久々のデートだと嬉しそうにしていたのは賢木なのに。なぜその約束を優先せずに今コイツは僕の隣にいるのか。「んー? 俺そんなこと言ってた? 皆本の気のせいじゃねぇの?」 白々しい顔をして下手にも程がある嘘を吐いている賢木を横目に見ながら、ムッと顔を顰めて口を開いた。「それで僕を騙せたと思ってるのか? はやく素直になったらどうだ」 腕を組んであからさまに不快感を現すと、急に慌て出す賢木が何だか面白い。「いや! 騙すつもりじゃなくて! これはマジで!」「……で? 本当のところはどうなんだ?」「……デート前にフラれた。そんだけ」 眉を吊り上げてふくりと頬を膨らませた賢木は、不服そうに唇を尖らせてそっぽを向いてしまう。その横顔を可愛いと思いながら、それを悟られないように口元を押さえた。「……そういうパターンもあるんだな」「それヒドくね? 俺もビックリしてんだよ」 まさかキープにされてたなんてな、と不満を顕にしている賢木に目を細めてうんうんと頷く。「賢木をキープにするなんて……」「だろ?! 引く手数多なのよ俺! 勿体なくね?!」「あー、いや。そういう意味じゃない」「どこまでもヒドイ!!」 皆本クンが冷たい! と空に向かって叫ぶ賢木に頬を緩めて、隣を歩く親友にそっと肩を寄せた。「それで僕のところへ来たのか」 くすりと笑いながら指摘してやると、賢木はウッとバツが悪そうな表情を浮かべて、タッと前に駆け出した。「そーだよ! 俺はフラれてさみしーの! だから寂しい俺を慰めてよ」 くるりと振り返りながらペロリと舌を出す賢木にやわく微笑んだ。 いいよ、僕でいいならいつだって。

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