だから雨はキライなの

「寒くないか?」差し出されたタオルは洗い立てのふかふかで、水分を含んで重くなった身体を優しく包んでくれる。「……風呂……準備するから。待ってて」先生は私の濡れて束になった前髪を指先で梳いてそっと微笑む。指先から垂れた雫が玄関の床を塗らした。ぽたぽたとシミを作っていくタイルを、ほんの少し眉を寄せて睨みつける。ふくりと頬を膨らませた私に苦笑いしながら先生は玄関を上がって濡れた頭を拭きながらバスルームに向かった。吸水性の高いタオルを使っても濡れた服の水分は拭いきれない。このままの状態で部屋に上がってしまうのは少し気が引ける。どうしたものかと悩んでいると濡れたシャツを脱ぎ去って上半身裸になった先生が玄関まで戻ってきた。「どうしたの。入りなよ」突っ立ったままだった私の手を取った先生は不思議そうな顔をして私の手を引いている。ふと合ってしまった視線から逃れるように顔を逸らして口を開いた。「……このまま入ったら床が濡れちゃうわ」「別に構わねぇよ。何なら運んでやろうか?」「ッ、いい! いらない! ふざけないで!」カッとなって叫べば、別にふざけてないのに、と先生は私の手の甲にキスをしてウインクしてみせた。「はっ、離して! 靴が脱げないわ!」「脱がしてあげようか?」「もう! 自分で脱げるから!」無理矢理手を振りほどいて足首のストラップをパチパチと外す。指先の濡れた感触が気持ち悪い。これではきっと床に足跡が残ってしまう。それでも家主がいいと言っているのだ。エイヤ、と目を瞑って濡れた足を床につける。ぬる、と濡れた感触に足を滑らせそうになって身体のバランスを崩すと咄嗟に先生が腰を抱いて私の身体を支えてくれた。「……やっぱり連れてってやるよ」「……イヤよ……一人で歩けるわ」先生の身体に手を突いて抵抗するように突っ張った。それでも先生は離してくれなくて、そのまま私の膝の裏に腕を入れて身体を掬い上げる。「まぁそう言わずに」「ちょ、ちょっと!」横抱きにした私の頬に軽く口付けて、ムカつくくらいのご機嫌な笑顔で私の顔を覗き込んだ。「このまま雨が止むまで……一緒にあったまろうぜ?」ニヤリと笑う先生の顔を手のひらで押し遣る。「……ホント、サイアク」雨の日はキライ。こんな甘い理由に使われる。そしてそれを受け入れる自分も甘くて。雨の日なんて、キライだ。

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