『君が好き』という哀切

空はどこまでも青かった。まっしろな雲が、風に乗って流れていく。そのスピードは思いの外速くて、あっという間に景色が変わっていった。寝そべったまま、雲を掴もうと空へ手を伸ばす。届かないのはわかってる。それでも、今は手を伸ばして掴んでみたい気分なんだ。誰に言い訳するでもなく、心の中でひとりごちた。もう、完全に手遅れだ。こんなに好きになるはずじゃなかったのに。まるで溢れてくるみたいに皆本が好きだ。それこそ、もうどうしようもないくらいに。好きで好きで堪らない。なのに。「君が僕を嫌うまでは、もう傍にはいられない。」俺たちの元を去った皆本は、余りにも残酷で。俺たち、つい最近まで上手くやってたじゃないか、とすがる間すら与えてくれなかった。俺にとって、お前の存在のデカさはお前が一番よく知ってくれていると思ってた。だって、俺の一番近くにいる存在は皆本、お前だったから。お前は違ったんだな。いや、わかってたけど。お前の心の中は何だかんだで薫ちゃんで一杯なんだよな。知ってたよ。知ってた上で見ないフリしてたんだ、俺は。だから、傷ついたわけじゃあないんだ。むしろ、変わっちまったお前でも、一番は薫ちゃんで、正直ちょっと安心したんだ。なのに、お前は誰一人近付けないオーラを背負っちまってて。俺はそっちの方がショックが大きかった。笑って俺を受け入れてくれた皆本は、もういなかったんだ。今のお前はサイコメトラーで生体制御が使えるエスパーの俺じゃなきゃ、使ってくんなかっただろ?ただの賢木修二には用がなかったはずだ。俺はその事実に絶望した。それでも俺を使ってくれるお前に、俺は歓喜に震えてて。好きだから、側にいられて嬉しい。好きなのに、俺を見てくれない。現実は、苦くて、甘い。

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