「アレ!? 珍しい! 起きてるじゃないっスか!」ちょうどよく温かい植物園でいつものように寝転けているだろうと思っていたのに、我らがボスはある一点をじっと見つめて王族らしい所作の美しい姿勢で座り込んでいた。「……起きてるんなら授業出てくださいよ。俺が先生方にどやされるんスから」食堂で調達してきた今日の昼飯を芝生の上に並べながら辟易と言うと、レオナさんは表情をぴくりとも動かさないままゆっくりと口を開いた。「……普通は……ああやって仲良くなったモン同士が番になるんだろ」「え」レオナさんが見つめている一点の先。そこには茂みのなかでヒソヒソと声を潜めながら笑いあうジャックくんとユウくんの姿。温室の空調と揺れる茂みのせいで、さすがの俺たちでも何を喋っているのかまでは聞き取れないけれど、楽しそうに会話しているのは窺えた。「ジャックはアイツと番になるのか」「へっ?! ……あー、ユウくんっスか? ……なんで?」思わずポロリと溢れ出た疑問にムッとした表情をこちらに向けたレオナさんは、ハァァ、と苛つきを隠さないままドサリと芝生に寝そべってしまう。「……ジャックは知らねぇが。草食動物は手近なところで相手を見繕って番になるんだろ。アイツの周りにいる男のなかじゃ、ジャックが一番強そうじゃねぇか」タシタシと少し早めの一定のリズムを刻んでいるレオナさんの尻尾。見なくてもわかる全身で表現されたイライラに思わず笑いそうになりながら、ここで笑っちゃあ頭から俺が喰われちまうと表情を取り繕った。「ジャックくんとユウくんはそんなんじゃないと思うっスよ」シシシ、と口元に手をやりながら笑うと、尻尾のリズムがより一層速くなってこの人意外とわかりやすいなぁとにやけてしまいそうになるのを必死に堪えた。「なに笑ってやがる」グルルル、と更に険しくなった目付きに、おー怖、とビビっているジェスチャーをして、ここからかなり離れた植物園の隅で笑い合っている二人を優しい気持ちで見つめた。「きっとレオナさんのことでもお話してるんスよ……ホラ、早く昼飯食って! 午後の授業はちゃんと出るんスよ!」チッ、と舌打ちするレオナさんを笑いながらいつもより丁寧にランチの支度を調えていく。この無自覚で不器用な王族が身近な幸せに気付けばいいと願って。
〜ラギー・ブッチの場合〜



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