2021年20号の幕間

「まぁどうせ無茶するなって要望は聞いてもらえないんだろうと思うんすけど」張り詰めていた空気を解すように肩を竦めて管理官と兵部の目を見つめる。「お二人に対して俺ができる最大限のコトはやりましたんで。気が済むまで暴れてきてください」「おい賢木!」ニッと口角を持ち上げれば焦ったような顔をして皆本が俺の肩を掴んだ。それを困ったような笑顔で見ていた管理官はゆっくりと目を閉じてそっと口を開いた。「……ありがとう、賢木クン。本当に……今まで、ありがとう」万感の思いを込めたような感謝の言葉にこの二人の覚悟を垣間見て、もうどうしたってなるようにしかならねぇんだなとそっと溜め息を吐いた。そうであれば、事態が最悪の方向へ進まないよう、俺も、皆本も精一杯抗うだけだ。「皆本クン、薫ちゃんのコト、お願いね。賢木クンも。絶対に無理はさせちゃダメよ」そっと俺たちの手を掴んでじっと俺たちの目を見つめる管理官に、ゆっくりと頷いて返事をする。続けてわかっていますと答えた皆本に、管理官は眉を下げて笑った。「賢木、世話になったな……じゃあひと暴れといこうか姉さん!」「不二子さんとお呼び! 京介!」賑やかに言い合いをしながらも、二人の背中は長年連れ添ってきた仲間の距離感が保たれていて、勝ち取った未来にふたりの無事も願わずにはいられなかった。二人の消えた青い空を見上げてから、気を引き締め直して皆本に向き直った。「さて、皆本。俺からも情報提供だ」じっと俺を見つめ返してくる皆本の目は、何もかも悟っているかのようにまっすぐに澄んでいる。それに苦笑いを溢してから、少しだけ声を潜めて皆本に伝えた。「アイツら、動くつもりみたいだぞ」「……だろうな。止められないとは思っていた」俺の密告に眉を下げて笑った皆本は、全くみんな本当に無茶ばかりするよな、と顔を俯けている。「どうするんだ?」まさか黙ってこのまま行かせてやるわけないだろうと問いかけると、眉を下げたままの皆本がそっと視線を外して思い詰めたように呟いた。「何とか……薫を安定させてやれないかな」「……と、言うと?」「薫の不調がメンタル起因なんだとしたら……それを僕が何とかしてやれないかな、と思って」僕の仮説を聞いてくれるか? と恐る恐る俺に視線を合わせた皆本は、今の薫ちゃんの状態を冷静に分析してみせて、その上で自己肯定感を取り戻す方法を述べた。「……つまり……薫ちゃんに告白するってことか?」「まぁ……そういう、コト……になるのかな」少しだけ眉を寄せて、でもはっきりと決意を固めた表情で告げた皆本に、ふっと肩の力を抜いて笑いかける。「……いいんじゃねぇの? お前が決めたんなら」「……こんなときに、って言わないのか」「こんなとき、だからこそだろ」「自惚れてるとか、思わないのか」「まぁ……すげぇ自信だなー、と思わなくもないが。お前と薫ちゃんの築いてきたモンを見れば、誰だって納得するさ」そうかな、と急に照れたように頬を染めて目を泳がせた皆本の背中を、気合いを入れるようにバシンと叩いた。「じゃあ俺も、やらなきゃなんねーことがあるから行くわ」「あぁ……いつも済まない。裏で動いてもらう形ばかりで」「いいんだよ。俺はこういうのが性に合ってる……お前も、頑張れよ」まっすぐな目で頷いた皆本にもう一度笑顔を返してひらりと手を振った。薫ちゃんのことはきっと皆本が何とかするだろう。アイツがずっと開発を進めてきた秘密兵器だってある。それなら俺は、みんなのサポートに回るだけだ。「さぁて。縁の下の力持ち、頑張りますか!」全ては明るい未来のために。

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