あのね、明日になったらね

目が覚めたら、とにかく走っていた。何だか動かし辛い足を一生懸命前へ前へと繰り出していた。とにかく逃げなくては。でなければ殺られる。本能みたいなものがそう叫んでいて。私を襲ってくる大きな黒い鳥から、必死になって逃げていた。「こっち来い!チビ助!」ハッとして足を止めると、声のした方に人が立っている。逆光で姿はよく見えないけれど、その人は私を助けてくれる気がして、その人へと向かって走り出した。大きな手が私を掬い上げるように抱き止める。シッシッと腕を払って黒い鳥を追い払ってくれた。その間、私は小さく身体を丸めてその人にしがみついていて。何だか懐かしいにおいがした気がして、顔を上げると、見たことがあるような、優しい笑顔が降り注いだ。「もう、大丈夫だ。カラスにやられたのか?怪我してる。俺が治してやるよ」ラボに着くまで辛抱な、と言われて、やっと身体中が痛いことに気付く。カラスに襲われて、必死になって逃げていたから、痛みなんて忘れてた。その人の手に包まれて、移動していると、もう一人、男の人が現れた。「連れて帰るのか、その猫」「おぅ。こんな綺麗な仔猫、珍しいぜ。しかも俺が触っても逃げねぇ」「お前、動物に嫌われてるもんな」「まぁ、サイコメトラーあるあるってやつ?動物の本能がサイコメトリーに危機感抱くんだろ」「怪我してるとはいえ、賢木になつくってことは、何か裏があるんじゃないか?」「え一?ギリアムの何かとか?こんな仔猫が有り得んだろ」「とにかく、サイコメトリーでフルレンジスキャンしろ」「…わかったよ。用心深いなぁ、皆本クンは」男の人二人のやり取りを聞きながら、既に私は力尽きかけていた。身体が重い。そして、ダルい。一生懸命走ったからかしら。とにかく、もう、目蓋が閉じてしまいそうで。どこか懐かしい声に包まれて、私は意識を失いかけていた。――私、ひょっとして、ここで、死ぬのかしら?ぼんやりと浮かんだ考えに、少しだけ寂しくなっていると、キィンと、よく聞いたことのある音がして、私を抱いていた大きな手が、私の身体に優しく触れてきて。その暖かい手の温もりに安心してしまって、私は意識を手放した。

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