ぱちり、と二人同時に目を覚ます。顔を見合わせて目配せをし、ゆっくりと周囲を窺いながら身体を起こしていく。「…何かに、巻き込まれたみたいだな」「ああ、どうやらそうみたいだ。」賢木は力を発動させて透視を試みている。皆本はぺたぺたと壁を触って現状を把握しようと動き出していた。流石、こういった状況に慣れているといったところか。冷静さを失わない二人はお互いの力をもって状況を打破する方法を探している。「…なんだここ?何も透視みとれねぇぞ?」「…建造物としても異常だ。一切の造作の気配が感じられない」コンクリートで出来てるのか?と壁をコンコンと叩く皆本は賢木に向かおうと振り向いたところで壁に書かれた文字に気付いた。「…?どうした?皆本」「え、いや、あれ…」さっきまではなかったように思う、その文字。異様なまでに白い壁に浮かび上がる黒い文字。二人してその文字を穴が開くかのように見つめている。「手を繋がないと…」「出られない…部屋?」皆本は首を傾げて、賢木はポカンと口を開けて呟いた。「手を繋ぐって、俺とお前がか?」賢木は壁と皆本を見比べて問い掛ける。皆本は少し考え込んでから、賢木に向かって言った。「いや、罠かもしれない。手を繋いだ瞬間、催眠が発動するとか」皆本の言葉にフム、と二人は考え込んでいる。この閉鎖空間でも冷静さを失わずにいられるのは二人の信頼感から来るものだろうか。とにかく、安定感が揺るがない。「ま、でもこの状況だ。引っ掛かってみるのもアリなんじゃね?」ホイ、と賢木が皆本へ向かって手を差し出した。皆本はそれもそうか、も恐る恐るながらも賢木の手を掴んだ。ところが、何も起きない。超能力戦はルールを理解した方が勝ち。そのはずなのに、相手の提示したルールに乗っかってみても何も起こらない。二人して慎重に部屋の様子を窺っていると、ブワッと壁の文字が変化する。その様子を動じることもなく二人で見守っていると、新たに現れた文字に賢木は突っ込んだ。「確かにッ!」壁に現れたのは、『それは握手です』という冷静な指摘。皆本は、この部屋の様子はどうやら何処かでモニターされているらしいと冷静に分析している。その間も二人は握手をしたままだ。「皆本?ご指摘の通り、手を繋ぐっていうのはもうちょっとさぁ…」「…?なんだ?」「もうちょっと…色気とか、あってもいいんじゃねぇの?」ぷう、と頬を膨らませ、口を尖らせている賢木を見て、皆本が少し頬を赤らめたのは言うまでもない。「い、色気って…君じゃあるまいし、手を繋いだぐらいで出るものか!」「そーいうんじゃなくて!繋ぎ方の話だよ!」賢木は掴まれた手をほどいて改めて手を差し出している。皆本はその手と壁の文字を見比べて、顔を真っ赤にした。「つ、繋ぎ方って!何でもいいじゃないか!そんなの!」「でもさっきのは握手だって突っ込まれてんじゃん!」「うっ、確かにそうだけど…」「…たまには皆本から繋いで欲しいなぁ…なんて」賢木はぽりぽりと頬を掻きながら皆本から目をそらした。皆本も眼鏡の位置を直しながら居心地悪そうに目をそらしている。「別に…繋ぎたくない訳じゃないんだぞ」そう言ってそろそろと皆本は賢木の手に指を絡めた。瞬間、二人は光に包まれた。「二人して居らんなったと思ったら、仲良う何しとるん?」我こそはツッコミ担当だとばかりに葵が呆れ顔で二人をを見ている。「うぉっ!外に出たのか!」「…みたいだな」二人の様子にはぁ、と溜め息をつきながらサイコメトリーを発動させる紫穂は、ジト目で二人を見ている。「そういうアピールは他所でやってくれないかしら?薫ちゃんもいるんだし」「お前ッ!透視したくせにその言い方はねぇんじゃねぇのっ!?」賢木と紫穂はいつも通りの言い合いを始めている。皆本が恐る恐る薫の様子を窺うと。「やっぱり、皆本と賢木先生って、そういう関係だったんだ?」泣き笑いのような表情で皆本を見つめる薫の姿がそこにあった。「いや!薫!これは!その!」もういい!と叫んで立ち去った薫を追い掛けようとすると、後ろから蹴りを喰らわされた。「いだっ!」「薫ちゃんを泣かすなんて許さない!」「ホンマや!絶対許さへんからな!」跳び蹴りの勢いのまま二人は薫を追いかけていってしまう。ポツン、とその場に取り残された男二人。未だにその手は繋がれたままだった。
今日の皆賢


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